半導体をテストで支えて持続可能な社会をつくる
株式会社アドバンテスト
スマートフォンやテレビなど、わたしたちの日常生活は大小さまざまな電気を使った製品のおかげで成り立っています。
こうした製品には「半導体」という部品が、なくてはならないことを知っていましたか?
キッチンで温かいお湯がすぐに出るのも、電車が時間通りに動くのも、それらの中にある半導体が正確に動いているからです。
もし、半導体が正しく動かなかったら、わたしたちの暮らしは大混乱してしまうでしょう。
半導体が正しく動いているか検査する装置をつくり、暮らしを支えている株式会社アドバンテストの後藤有貴さんに、半導体の役割と、半導体が正確に動くことの大切さについて教えてもらいました。

株式会社アドバンテスト T2000プロダクトユニット 第10ソフトウエア部
後藤有貴さん
見えないところにある半導体が支えるわたしたちの暮らし
みなさんは「半導体」がどんなものか知っていますか? 半導体は電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を持つ物質のことで、スマートフォンやエアコン、自動車やゲーム機などの部品として使われています。 半導体の役割は、人間の脳や、目、耳、触感などに例えると分かりやすいかもしれません。 機械を正確に動かすために、動きや力加減をコントロールする司令塔の役割をしたり、画像や音声、温度など、周りの環境や動作のデータを機械に取り込むためのセンサーの役目をしたり、半導体はさまざまな役割を持っています。いくつかの半導体が組み合わさることで、今や人間より優れた能力を発揮することもできるようになっています。(後藤さん)
半導体は、身の回りのあらゆる電気を使った製品に使われていますが、製品の中にあるので、普段、わたしたちが目にすることはありません。しかし、この小さな部品が、わたしたちの快適で便利な暮らしを支えているのです。

目にすることはないけれど、身近な暮らしの中でたくさんの半導体が活躍している。
半導体で広がる未来の可能性
半導体が高度に進化したことで、今まではできなかったことや想像もしなかったことが現実になりつつあります。
最近、現金の代わりに、スマートフォンやICカードなどで「見えないお金」のやりとりをして、電車に乗ったり買い物をしたりできる、電子マネーやキャッシュレスという新しいお金の仕組みが身近になってきました。この仕組みも、半導体が支えています。
スマートフォンやICカードにある半導体が、お店や駅で買い物をしたときの情報を正確に読み取り、読み取った情報をインターネットに接続して、金融機関へ正確に届ける役割を果たしています。
また、電子マネーを安全に利用できるようにする、本人確認のための、指紋や顔を認証して判別する機能も、半導体の能力や性能が進化したことで実現できるようになりました。
このほかにも、周囲の状況を判断し、次の動作を指示する車の自動運転技術、映像や音声、触感を通信で伝える VR 技術も半導体のさまざまな機能によって実現され、実用化に向かっています。
半導体は、わたしたちの日常を安心、安全、快適にするとともに、夢のような未来をもたらしてくれる可能性も秘めているのです。(後藤さん)

現金を使わない「キャッシュレス」の仕組みにも半導体が使われている。
SDGsを達成するのにも大きな役割を果たす半導体
半導体は、SDGsとどのように関わっているのでしょうか?
半導体の能力や性能が進化すれば、それを使うさまざまな製品の小型化や効率化、省エネ化につながり、わたしたちの安全で快適な暮らしや、地球環境への負荷を減らすことにつながります。
また、新型コロナウイルス感染症の流行がきっかけとなり、わたしたちの生活様式は大きく変化しました。学校の授業や会社の会議をオンラインで支えるシステム、離れた場所からの問診や治療をする遠隔医療なども、半導体なしでは成り立たないものになっています。
そして、地球温暖化の解決においても、半導体の役目は重要です。
地球温暖化の解決に向けては、その要因の一つである二酸化炭素の排出を減らす、再生可能エネルギーの普及がこれまで以上に重要になります。しかし、再生可能エネルギーは天候の影響を受けやすく、安定した発電が難しいのが課題となっています。
そこで、例えば、太陽光発電では、太陽の動きに合わせて自動的に太陽光パネルの向きを調整する仕組みや、発電した電気を無駄なく届けるための仕組みをつくり、発電した電気を効率的に使い、課題の解決につなげています。こうした仕組みを支えているのも半導体であり、半導体が気候変動の解決にも貢献しているのです。(後藤さん)
すべての人が豊かで持続可能に暮らしていけることを目標にしているSDGs。その実現のためには、教育や健康、環境や経済などの課題を、新しい技術で解決しなければなりません。そして、そこには半導体とよばれる小さな部品が大きな力を発揮しているのです。

いろいろなSDGsの目標に半導体の力が大きく関わっている。
SDGsアクションコーナー
ここまでの文章を読んで、以下の問いについて調べたり、考えたりしてみよう。
①私たちの生活の中で、半導体が使われている製品や技術にはどんなものがあるか、調べてみよう。
②エネルギーと半導体との関わりについて調べ、省エネのために私たちができることについて考えよう。
③新しい技術やサービスが生まれると、私たちの暮らしにどんな変化が生まれるか、考えてみよう。
▶はたらく半導体をみてみよう!
▶エネルギーを上手に使おう
▶半導体とSDGs
半導体が正確に動くかを厳しくテストする重要性
わたしたちの生活を支え、持続可能な社会をつくるためにも欠かせない半導体ですが、ひとつの製品に、何百個もの半導体が使われていることも少なくありません。
半導体は、電車や飛行機、自動車にも使われています。ですから、もし、半導体が正しく動かなかったら、わたしたちの暮らしには大きな混乱が生じてしまいます。
どんなに便利で素晴らしい製品であっても、それを支える半導体が正しく動かなければ、その性能を正しく発揮することができません。ですから、半導体が正しく動くか検査(これを半導体のテストと呼んでいます)をすることはとても重要なことなのです。(後藤さん)

半導体をテストするアドバンテストの機械装置。
アドバンテストでは、半導体の最終テストに使うシステムをつくり、半導体をつくる会社と一緒に正しく動くかどうかのテストをしています。
半導体も電子部品の一つなので、100%正しく動くとは限りません。そのため、暮らしを支える多種多様な製品をつくるときは、使用する半導体を厳しく検査する必要があります。1秒間に10億回もの情報のやりとりをする半導体を、実際の製品で使われるのと同じ速さで検査したり、何百個もの半導体を同時に動かして、正確に反応するかを試したりもします。
半導体は、人の命に関わるような医療機器や自動車にも使われています。ですから、何重もの厳しいテストを繰り返して、正しく動くかどうかを確認しなくてはなりません。さまざまな役割を持つ半導体の性能に合わせて、どのようなテストをするかを考え、それに必要な装置やソフトウエアを開発するのがわたしたちの仕事です。(後藤さん)
厳しいテストを繰り返し、不可能を可能にする
半導体が正しく動くために行うテストは、「小さな半導体に命を吹き込む」ことだと、後藤さんは言います。
さまざまな製品の中にある半導体が正しく動くことで、製品が性能を十分に発揮し、わたしたちの生活が、安心安全で快適なものになっていきます。
半導体のテストを重ねていくことは、「できないことをなくすことへの挑戦」です。こうした挑戦によって部品の性能が上がれば、これまでにはない性能を持った製品がつくれるようになります。そして、こうした積み重ねが、より良い社会の基盤をつくり、持続可能な社会を達成することにもつながります。
今はできないことでも、いつかできるようになると信じ、あきらめずにチャレンジし続けること。
それが、持続可能で明るい未来へとつながるのだと思います。(後藤さん)
アドバンテストのビオトープを見てみよう!

アドバンテストの研究開発センターには、自然の立地を生かしたビオトープがある。
アドバンテストには、地域の里山を再現したビオトープがあります。 季節の草花や生きものを見ることができます。
原稿作成:株式会社 日経BP