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木を育て、使い、森林のじゅんかんをつくる

住友林業かぶしき会社

15.陸の豊かさも守ろう

豊かなめぐみをあたえてくれる森林

豊かな自然を感じさせてくれる森林。
その森林の未来を守り、育てていくためにはどうしたらいいのでしょうか。

なえを植えて木を育て、成長した木をり出して人々のらしに活用するなど、「木」にまつわるさまざまな仕事をしているのが住友林業です。住友林業で、森林の管理をしている渡部わたなべまさひろさんに、森林を育てることについて聞いてみました。

住友林業株式会社 資源環境事業本部 大阪森林事業所 渡部大寛さん
※所属は2025年時点のものです。

みなさんは、森林にはどんなやくわりがあると思いますか?

森林には、雨水をたくわえてきれいな水を生み出す、さんたんきゅうしゅうしてさんをつくる、生きものたちのすみかになる、こうずいしゃくずれなどをふせぐ、暮らしに必要な木材を育てる、わたしたちの心や体をリラックスさせてくれるなどの働きがあります。また、木は、成長するときにたくさんの二酸化炭素を吸収することで、地球おんだんをふせぐことにも役立っています。(渡部さん)

手入れがとどかず「れた森林」がえている

日本は国土のおよそ7わりが森林で、世界でも緑がゆたかな国です。このような自然のめぐみを生かして、日本人は昔から、木で建物や道具をつくり、木に親しむらしをしてきました。しかし、げんざい、日本には荒れて元気を失っている森林がたくさんあると渡部さんは言います。どういうことなのでしょうか?

日本の森林には自然のままの「天然林」と、人の手で植えられた「人工林」があります。今から、60~70年ほど前、げんとなる木材を育てるためにたくさんの木を植えて人工林をつくりました。しかし、これらが手入れをされずに放置され続けてしまったことで、現在はたくさんの森林が荒れてしまいました。
荒れた森林は、太陽の光が地面にとどかず、うすぐらいため、地面に草はほとんど生えず、栄養が行き届かない木はひょろひょろと細く建物や道具の材料にすることができません。また、生きものが住みにくい森林となり、固くなった土は大雨の時にこうずいしゃくずれを引き起こすなど、多くの問題を生み出してしまいます。(渡部さん)

元気な森林

荒れてしまった森林

本来であれば、60~70年前に植えた木の多くは、今まさにばっさい(木が成長して伐るのにてきした時期)をむかえています。しかし、海外から多くの木材がにゅうされるようになったことなどの理由から、日本の木のしゅっったため、植えた木がられることも減りました。また、木の出荷が減ったことで、林業で働く人も少なくなり、わかい働き手も減って人手不足で手入れをすることができなくなり、森林がどんどん荒れてしまったのです。(渡部さん)

人工林

人がなえを植えて育てた森林。同じ種類の木だけが植えられていることが多い。日本ではスギ、ヒノキ、カラマツなどのしんようじゅが中心。


天然林

長い年月をかけ、針葉樹やこうようじゅなどがバランスをたもちながら、その土地の気候に合うようにできた自然の森。

育てて、って、使う「森林のじゅんかん

れた森林が元気をもどすには、どうすればよいのでしょうか。

人がつくった森林は、てきせつに管理して手入れをしなくてはなりません。苗木を守り、成長した木を伐る、伐った木をさまざまなところで適切に使う、使った分の木を新しく植えて育てる、そして成長した木を伐ってまた活用する・・・。元気な森林をつくり、守り続けるには、このような「森林の循環」をつくることが大切です。木を植えて終わりではなく、成長した木を伐って新しい木を植える、こうしたサイクルをかえすことで、森林はいつまでも元気でいられるのです。わたしたちは、50~100年という長い年月をかけて森林の循環をつくり、元気な森林を育て続けています。(渡部さん)

伐る、加工する、使う、植える・育てるという循環が、生き生きとした森林を育てるためには必要です。

住友林業では、全国におよそ48,000ヘクタール、日本の国土のおよそ800分の1という、広い面積の森林を管理し、森林のじゅんかんをつくり続けています。その具体的な取り組みを教えてもらいました。

森林の循環をつくる取り組み

1.植える・育てる

住友林業では、北海道や愛媛県など、全国に6カ所にある「じゅもくいくびょうセンター」でなえを育てています。コンテナというようを使い、じょうで植えやすいなえ木を育て、育った苗木を山に植えます。また、植えた苗木が鹿などの動物に食べられてしまわないよう、ネットやツリーシェルターで守り、定期的にじゅんかいしています。


2.伐る

植えた苗木は、成長に合わせて手入れをします。木が小さいうちは、日光をしっかり浴びられるようしゅうの草をります(下草刈り)。あるてい成長すると、育ちの悪い木や曲がっている木を間引いたり(かんばつ)、ぶんえだを切ったり(えだち)、木材としてよい木に育て、計画的にばっさいしていきます。


3.運ぶ・加工する

り出した木は、長さや太さで分別し、角材や板などに加工します。その後、木材として、家や建物、道具や家具、紙の原料、発電用の燃料などとなります。


4.使う

加工された木材はさまざまなところで使われています。わたしたちがふだん使っているえんぴつつくえ、ノートの紙、オムツ(サニタリープロダクツ)、ダンボールなども木からつくられています。

新しいじゅつで、進化する林業

長い年月をかけて木を育て、木材として販売するのが林業です。手間のかかる作業も多いのですが、最近は、新しい技術を使うことで、もっと便利でこうりつてきに作業できるようになりました。
例えば、これまではなえを植えるために山に道をつくるところから始めていたなえ木運びも、ドローンを使って効率的に行うことができるようになりました。
また、山の地形や木の量をあくするのにも、以前は広い山の中を歩いて回っていましたが、今はレーザじゅつしゅとくしたデータをパソコンに送って管理できるように。技術の進歩が林業をどんどん進化させています。(渡部さん)

ドローンで苗木を運ぶようす

航空レーザ計測の写真

元気な森林を守るには、「木を使うこと」が大切

みなさんの中には、「木をらないことが、森を守ること」と、思っている人もいるかもしれません。しかし、これまで見てきたように、元気な森林を育てるには、"木を伐って、使ってまた植えること"が必要となります。(渡部さん)

しかし、昔は木でつくられていたせいひんの多くが、今では石油からつくられるプラスチックなどにわっているのがげんじょうで、木を使われることが少なくなっています。

木にはプラスチックなどの人工でつくられたものとはちがい、自然の材料ならではの良さがあります。また、かぎりあるげんの石油や石炭と違い、人が手をかけることでさいせいのうで、持続的に使い続けられる資源という点でもすぐれているといえるでしょう。(渡部さん)

木はてるところがなく、全てゆうこうに活用することができます。木くずをやして、その熱を利用する「もくしつバイオマス発電」では、かんきょうにやさしい方法で電気を生み出しています。また、国内や海外では木でつくられた高いビルのけんせつも進んでいます。

木のくずを燃やして電気をつくる木質バイオマス発電

さまざまなアイデアやじゅつを使って、これからももっと木がたくさん使われるようになるといいですね。木を使う機会がえると国産の木材しゅっも増え、るべき木がきちんと伐られ、また植えられるようになり、森林の良いじゅんかんがつくられていきます。そして、それは森で働く人々のしゅうにゅうにもつながり、林業の「人手不足」のかいけつにもなるでしょう。
加えて、木は成長するときにたくさんのさんたんきゅうしゅうするので、木を使い、新しく植えて育てることで、地球おんだんをふせぐことにもつながります。

このように、木を適切に使うことが、ゆたかな森林を育て、地球を守ることにもつながるのです。(渡部さん)

社会課題に林業のちからでこうけんし、ゆたかな自然を

みなさんの中で、ふんしょうなやんでいる方はいますか。スギやヒノキは森林資源のじゅんかん利用のためには欠かせないじゅしゅである一方で、花粉症のげんいんにもなっています。
最近の林業では、成長が早くさんたんきゅうしゅうりょうが多い「エリートツリー」や、花粉の量が少ない「少花粉スギ」、花粉を出さない「無花粉スギ」などさまざまなとくせいを持つ苗木が注目されています。多様なニーズに合わせた苗木がきゅうすれば、花粉症が引き起こす、さまざまな社会課題のかいけつにもできるかもしれません。(渡部さん)

豊かな自然は、地球に生きるわたしたちにとって大切なたからものです。

手入れがとどき、生き生きとした森林はきれいな水や空気を生み出し、さまざまな植物や動物たちが集まります。そして、美しい森林がある山々は、わたしたちにとっての「心のふるさと」です。

いつまでも美しい豊かな森林を守るためにも、「木を使い、親しむらし」について、ぜひ、みなさんで考えてみてください。(渡部さん)

原稿作成:株式会社 日経BP


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