2024年更新
きれいな水を使い続けていくためにできること~「サントリー天然水の森」を守る活動から~
サントリーホールディングス株式会社
地球の水はどうやって生まれているの?
地球上のあらゆる生き物は水がないと生きていけません。その水を守り、育み、大切に使うことは、水の惑星・地球に生きる私たちの責任です。
私たちが飲む水をペットボトルの商品として生産しているサントリーで、水の研究をしている矢野伸二郎さんに、水に関するお話を聞きました。
わたしたちが飲んでいるペットボトルの水はどこからやってくるのでしょうか?

矢野伸二郎さん
サントリーグローバルイノベーションセンター 水科学研究所 主任研究員(※2019年取材時点)
私たちが飲んだり生活で使ったりする水は、海から蒸発し、雲となり、雨や雪となって地上に降ってきます。その後、水は森などの陸地に浸み込んで地下水となったり、湧き水が集まって川となったりして、再び海にもどっていくのです。このように、水は常に循環しています。(矢野さん)

水の循環のようす
どんな森が水を育んでくれるの?
水の循環で大切なのは、水がしっかりと土の中に浸み込むことです。
そのためのポイントは、「ふかふかな土」。
ふかふかな土は、植物の根が土の中にしっかり張り巡らされていることがとても重要です。その土の中を、微生物や、ミミズやモグラなどの小動物が活動することで、自然に耕されて、水がゆっくりと浸み込むふかふかな土ができあがります。(矢野さん)

水が浸み込むふかふかの土
雨や雪として地面に降り注いだ水は、森のふかふかな土の中に浸み込み、じっくりとろ過されていきます。何層にも重なっている地層がフィルターのように働き、汚れ(不純物)を取り除き、きれいな地下水となって流れ、一部は湧き水として再び地上に出てきます。きれいな水を生み出すのに、森は大きな役目を果たしているのです。
サントリーでは、このように自然の力で磨かれたきれいでおいしい地下水をくみ上げて商品として生産。その上流で豊かな水を育む森を「サントリー天然水の森」と呼び、その森を守る活動を行っています。

サントリー天然水の森。おいしい水は豊かな森が育んでいる。
「天然水の森」で育まれる豊かな水を守ることが私の仕事です。そのために森や土の専門家と一緒に、森の奥まで入って、湧き出ている水の性質や水の量、流れを調べたり、森がどんな状態かを細かく調査。それらのデータやサンプルを研究所に持ち帰り、さらにくわしく分析しています。
地上からは見えない地下水がどのように流れているのか、どんな状態なのか、森で集めたさまざまなデータから知ることができます。(矢野さん)
水を育む森を守るためにはどうしたらいいの?
豊かな地下水と豊かな森はひとつのセットです。地下水は目に見えず、人の手の届かないところにありますが、その入口である森を私たち人間がより良い環境にすることは可能です。森を理想的な状態に近づけることが、きれいでおいしい地下水をつくることにつながります。(矢野さん)
では、森はどのように守ればよいのでしょうか? たくさん木を植えればいいのではないか、と考えがちですが、そうとも限りません。
日本の森のほとんどが、一度は人の手で木が植えられ、整備されてきた森です。しかし、林業をする人が減り、手入れが行き届かず荒れた森が増えています。「サントリー天然水の森」では、不要な木を間引く「間伐」を大切な活動のひとつとしています。ほかにも、森の作業道の整備や植物の保護、生態系を保つために野鳥が安心して暮らせる環境保全など、森を健康な状態に保つさまざまな取り組みをしています。(矢野さん)

不要な木を間引く間伐は森を守る大切な活動の一つ。
人が手入れせず、ほうっておかれた森は、どうなってしまうのでしょうか。
木が密集して生えると、森の地面に太陽の光が届かず、下草が育つことができません。下草には上から落ちてくる雨の衝撃をやわらげる働きがあるため、手入れせずにほうっておかれた森に雨が降ると土が流れやすく、洪水や土砂崩れなどの災害の危険も増します。
災害を防ぐためにも、森をきちんと手入れすることはとても大切なのです。
(矢野さん)
森は、水の源となるだけでなく、人が生きるのに必要なさまざまな役割を果たしています。水を守るために森を守る活動が、そこで暮らす生き物を守り、災害を防ぐことにもつながっているのです。
SDGsアクションコーナー
ここまでの文章を読んで、以下の問いについて調べたり、考えたりしてみよう。
小学生はこちら
▶水の調べ学習
≫1日に使う水はどのくらい?
≫水にまつわる言葉って何があるかな?
≫体の中の水の量はどのくらい?
中学生・高校生はこちら
水・生き物・資源について、QuizKnockと
いっしょに学んでいこう!
工場で取り組む、水を守るための「節水」
水を守るには、水の入り口の森を守るほかに、水を大切に使う「節水」も重要です。「サントリー天然水」を生産している山梨県の天然水南アルプス白州工場でも、「水の3R」で節水を実現しています。

サントリーの「水の3R」
天然水南アルプス白州工場長の塚本祐二さんは、工場での取り組みを次のように教えてくれました。

サントリープロダクツ株式会社 天然水南アルプス白州工場長(※2019年取材時点)
塚本祐二
天然水南アルプス白州工場では、商品の原料としてだけではなく、容器や機械の洗浄や冷却用にも多くの水を使うため、「節水」はとても大切なテーマとなります。そこで、できる限り使う水を少なくする(リデュース)、繰り返し使う(リユース)、処理をして再生利用する(リサイクル)、という「水の3R」を徹底し、水使用の削減を行っています。
具体的には、水を繰り返し使うシステム「水のカスケード(多段階)利用」という技術を採用しています。(塚本さん)
「水のカスケード(多段階)利用」とは、製造工程で使用する水を、洗浄水や冷却水などいろいろな目的に合わせて5つのグレード(清浄度)に分け、高いグレードが要求される用途から、次のグレードでまかなえる用途へ段階的に再利用し、水の使用量を大幅に削減する技術のことです。

この5つのグレードの水を上手に回していくことで、使う水の量を減らしていきます。最後の最後で工場では使えなくなった水も、しっかり排水処理をして、そのまま直接川に流せるまできれいにして排水施設に送っています。(塚本さん)
SDGsを達成するためのメッセージ
最後に、私たちにとって大切な水をどう守り、どう使っていけばいいのか。お二人からメッセージをいただきました。
みなさんは、自分の住んでいる町の水がどこから来るのかについて学校で習っていると思います。実はこの水の循環は、国や地域によって大きく異なります。雨がたくさん降って洪水が起きる地域もあれば、少なすぎて水を思うように使えない地域もあるのです。自分たちがふだん使っている水をよく知り、ほかの国や地域とはどう違うのかを考えることが、世界中の人たちにとって大切な水を守ることにつながります。ぜひいろいろな場所に興味を持ち、そこにある水を実際に見てみてください。(矢野さん)
工場では水を循環し、できるだけきれいにして戻すことに取り組んでいます。みなさんの生活の中でも、節水のためにできることがたくさんあります。歯をみがくときに水を出しっぱなしにしない、お風呂の残り湯を洗濯に使う、ということもそのひとつです。そういう小さな積み重ねが、みなさんやみなさんの子どもたちの未来をつくっていきます。水は私たちの命をつないでくれる大切なものです。一人ひとりが、今日から自分にできることをぜひはじめてみてください。(塚本さん)
原稿作成:株式会社 日経BP