健康で強い体、元気な体をつくる~いのちのもと「アミノ酸」の力~
味の素株式会社
私たちは、食事を通して、炭水化物、脂質、たんぱく質、無機質、ビタミンなど、命を保ったり、活動したり、成長したりするために必要な栄養素を体にとりいれています。
健康な体をつくり、毎日元気に過ごしていくためには、これらの栄養素を食べ物からバランスよくとることが大切です。
「健康寿命」という言葉を知っていますか? これは私たちが元気に日常生活を送れる期間という意味です。いつまでも健康で長生きするために、日頃から「健康なからだづくり」について知っておくことはとても大切です。
栄養素の中で体をつくるはたらきをする「たんぱく質」は、健康な体づくりには欠かせない栄養素です。このたんぱく質のもととなっているのが「アミノ酸」という物質です。
このアミノ酸を100年以上研究している味の素グループで働く加藤弘之さんに話を聞きました。

加藤弘之さん
味の素株式会社 食品研究所 技術開発センター 代謝研究グループ 兼 コーポレートサービス本部 オリンピック・パラリンピック推進室 ビクトリープロジェクトグループ 主任研究員(2019年当時)
体をつくって動かすたんぱく質(アミノ酸)
私たちの体は60%水分でできています。その次に多いのがたんぱく質で約20%。このたんぱく質のもととなるのがアミノ酸です。
たんぱく質は、筋肉、髪の毛や皮膚、心臓や胃などといった組織のもととなります。また、だ液などの消化液に含まれる消化酵素や、病気や感染症から体を守る免疫のもとになる物質、体の働きを調整するホルモン、血液の成分などもたんぱく質からできています。
このように、私たちの体をつくったり、動かしたりしているのは、ほとんどがたんぱく質であり、そのもとになる物質がアミノ酸です。(加藤さん)

人の体は60%が水分、次に多いのが20%を占めるアミノ酸(たんぱく質)。
【資料提供:味の素グループ】
では、たんぱく質が足りないと、どうなるのでしょうか?
髪の毛がパサパサになったり、筋肉が減って転びやすくなったりすることもあります。また、たんぱく質が十分に足りていないと、疲れる、肌があれる、かぜを引きやすいといった症状の原因の一つにもなります。(加藤さん)
地球の生き物は20種類のアミノ酸の組み合わせでできている
私たちのからだをつくっているたんぱく質は、約10万種類。ヒトだけでなく、動物や植物、昆虫などのからだも実に多種多様なたんぱく質によってつくられています。そのすべてのたんぱく質が、20種類のアミノ酸の組み合わせからつくられています。
つまり、地球上のすべての生き物が、たった20種類のアミノ酸でつくられているのです。

アミノ酸の組み合わせによって、10万種ものたんぱく質がつくられる。
【資料提供:味の素グループ】

地球上の生き物は植物も動物もすべてがアミノ酸からできている。
【資料提供:味の素グループ】
20種類のアミノ酸のうち、「必須アミノ酸」といわれる9種類のアミノ酸は、体の中でつくることができません。そのため、ふだんの食事から必須アミノ酸をしっかりとることがとても大切です。(加藤さん)
20種類のアミノ酸 | ||
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20種類のアミノ酸 |
必須アミノ酸
ロイシン・イソロイシン・バリン・リシン(リジン)・トレオニン(スレオニン)・ヒスチジン・フェニルアラニン・トリプトファン・メチオニン
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非必須アミノ酸
グルタミン酸・グリシン・アルギニン・アラニン・グルタミン・システイン・プロリン・アスパラギン酸・アスパラギン・セリン・チロシン
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バランスの良い食事で健康な体をつくる
では、私たちの健康に欠かせないたんぱく質(アミノ酸)はどうやってとれば良いのでしょうか?
アミノ酸が豊富な食べ物としては、肉類、豆類、卵などがあります。特に肉類のような動物性たんぱく質が豊富な食べ物は、じょうぶな体をつくるのに優れた働きをします。(加藤さん)

アミノ酸がたくさん含まれている食べ物。
【資料提供:味の素グループ】
大切なのは、こうした食べ物を1日3食、バランス良く食べること。特に朝食は簡単に済ませることが多く、たんぱく質が不足しがちですので、意識的にたんぱく質が豊富な食事を心がけることが大切です。ふだんの食事で、「最近、肉や魚など、たんぱく質をあまり食べていないな」というときは、栄養補助食品などもとり入れて、しっかりアミノ酸をとるようにしましょう。
特に、みなさんのように成長期の子どもは、大人よりもたくさん栄養が必要なので、「バランスよく、しっかり食べる」ことがとても大切です。(加藤さん)
SDGsアクションコーナー
ここまでの文章を読んで、以下の問いについて調べたり、考えたりしてみよう。
①栄養バランスの良い食事とはどんなものか、考えてみよう。
②栄養バランスの良い献立を考えて、家族のために作ってみよう。
参考サイト:みんながつくる、食の未来
▶栄養と健康
≫栄養バランス良く食べるとは?
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/environment/kids/index.html
運動にも役立つアミノ酸の力
健康で元気な体を保つには、運動も大切です。アミノ酸は、運動をするときにも大きな働きをしています。アミノ酸の研究で分かった知識を、さまざまなスポーツの分野で広めている味の素グループの河内未土さんは、アミノ酸と運動の関係について、次のように教えてくれました。

河内未土さん
味の素株式会社 アミノサイエンス事業本部 スポーツニュートリション部 マーケティンググループ(2019年当時)
みなさんは運動をすると、のどがかわいて水が飲みたくなりますよね。実は、これと同じことが、筋肉にも起きています。運動をすると、筋肉はふだんよりたくさんのエネルギーを使うことになります。そのとき、筋肉のもとであるたんぱく質を分解して、エネルギーに変えています。そうすると、筋肉が減ったり、傷ついたりして、けがの原因になります。だから、運動の後や運動の最中に、筋肉のもととなるたんぱく質、つまり、アミノ酸をできるだけ早く補うことで、疲れた体の回復を早めたり、運動によるけがを防いだりすることができます。
(河内さん)
このように、運動の前後に効果的にアミノ酸をとることで、疲れや筋肉痛を防ぎ、運動を長く続けることができたり、良い結果を生み出したりすることにもつながります。

プロ野球ソフトバンクの松田選手にアミノ酸について説明している河内さん。(2019年当時)
食べ物が消化され、たんぱく質、さらにはアミノ酸に分解されて、体の中に吸収されるにはだいたい3-4時間かかりますが、消化の必要がないアミノ酸そのものなら30分ほどですばやく吸収されます。激しい運動のあとは、アミノ酸を摂取して、早く体力を回復させることもおすすめです。(河内さん)
トップアスリートも注目するアミノ酸
味の素グループでは、アミノ酸、食事を通じて栄養面からトップアスリートをサポートしています。トップアスリートたちも、栄養バランスの良い食事や、効率的にアミノ酸を体にとり入れて、勝負に勝つための体づくりに取り組んでいるのです。
私はオリンピック・パラリンピック日本代表選手団の食事やコンディションをチェックしながら、効果的なトレーニングができるように、栄養のサポートをしています。アスリートのすばらしい成績を支えるもののひとつに、栄養に対する意識の高さがあります。(加藤さん)

パラアスリートの山本選手と全国栄養士大会で講演した加藤さん。
健康で元気な体が幸せでより良い生活につながる
最後に、加藤さんと河内さんはアミノ酸と健康の関係について教えてくれました。
トップアスリートだけでなく、みなさんのような子どもたちの健やかな成長や、高齢者がいつまでもけがなく健康で元気に生活していくためにも、アミノ酸はとても大切な働きをしてくれます。
そして、アミノ酸を体にとりいれるために欠かせないのが「バランスのよい食事」。だから、このことについて、もっとみなさんに知ってもらいたいと思っています。それがSDGsのゴール3「すべての人に健康と福祉を」にも役立つはずです。(加藤さん)
強いアスリートほど、食事に気を使っていることが多いものです。アミノ酸が健康やスポーツに役立つことを知っていると、その分、元気な体を維持し、スポーツで強くなれる可能性が広がっていきます。
また、じょうぶで元気な体は、心も元気にしてくれます。食事や運動で健康を保つことが、みなさんのよりよい生活、よりよい人生につながっていくと思っています。(河内さん)
原稿作成:株式会社 日経BP
SDGsアクションコーナー
ここまでの文章を読んで、以下の問いについて調べたり、考えたりしてみよう。
①運動をするときにどんなことに気をつければよいか、考えてみよう。
②高齢者や障がいを持つ人といっしょにできるスポーツには、どんなものがあるか調べてみよう。
③自分の暮らす地域で行われているスポーツ行事を調べて、参加してみよう。
参考サイト:AJINOMOTO®×SPORTS
▶栄養サポートしている選手・競技団体