飢餓とは?
飢餓とは、十分な食べ物を食べられずに栄養不足になり、健康を保つことができなくなった状態のことをいいます。
今、世界では約7.4億人※1が飢餓に苦しんでいます。これは世界人口の9人に1人の割合で、飢餓に苦しむ人の多くは、途上国に住む人たちです。
飢餓が最も広がっている地域はアフリカです。そして、飢餓人口が最も多いのはアジア(特に南アジア)で、約4億人以上もの人が飢餓で苦しんでいます。
子どもが飢餓になってしまうと、病気とたたかう力が弱くなって、命を落としてしまうこともあります。また、飢餓状態の妊婦が出産した場合、生まれた赤ちゃんはすでに栄養不足で、無事に出産できても、その後に亡くなってしまう場合が少なくありません。
飢餓で子どもたちの成長が遅れたり、亡くなったりすることは、その国の成長や発展の遅れにもつながります。
飢餓の問題は、健康や命の問題に加え、教育や雇用など、SDGsのほかの目標とも関連の深い目標であるといえます。
読み解くヒント
飢餓はどうして起こるの?
では、どうして飢餓が起こるのでしょうか?
その原因はさまざまですが、一つは自然災害によるものです。 世界で食料不足に苦しむ人たちの8割以上は、自然災害が発生しやすい場所で生活しています。
地震や津波、洪水や干ばつなどが起こると、農作物や田畑が被害を受け、家や仕事もうばわれて、食料を手に入れることが難しくなります。同時に、農業をするために必要な道具や作物も失ってしまい、食料の安定供給にも打撃を与えます。
気候変動による台風や集中豪雨、森林火災などによる被害も増えており、途上国で農業を営む人たちに大きな影響を与えています。
紛争も飢餓をもたらす深刻な問題です。
世界で飢餓に苦しむ人たちのうち、約4.9億人は、紛争地域に暮らす人たちです。紛争が起きると、家や農地などをすべて捨てて避難しなくてはなりません。そうなれば、食料の確保が困難になり、飢餓状態になってしまいます。
途上国の農業技術が低いという問題もあります。
農業技術が低いと農作物が少ししか取れず、十分な食料が確保できません。また、農作物の肥料にするために、隣の森を燃やして新しい農地をつくる「焼き畑農業」を行うなど、大切な森を失っている地域もあります。
このほか、交通が整っていなかったり、貯蔵や保存施設が十分でなかったりするなど、生産したものを適切に運び供給ができないことも、飢餓を生み出す原因になっています。
そして、これからは世界の人口がさらに増えていくといわれています。その結果、2050年には今と比べて食料が1.7倍も必要になるという予想もあり※2、それだけの食料をどのように生産していくかは世界全体で解決しなければならない課題です。
持続可能な農業で飢餓を解決する
飢餓で苦しむ人々を救い、世界中の人々が安心して食料を得られるようにするにはどうすれば良いのでしょうか?
飢餓で苦しむ人々には、今も、国際社会が協力して食料や栄養を届ける援助をしています。
こういった活動ももちろん重要ですが、世界の農家の大部分を占める途上国の農家が、援助に頼らず自分たちで必要な量の食べ物を生産できるようになることが、飢餓の問題の解決につながっていきます。
とはいえ、生産力を高めるために、やみくもに畑を広げたり、肥料を使ったりすれば良いというわけではありません。 環境や生態系を守り、災害にも強く、将来にわたって食料を生産し続けられる方法を実践する必要があります。
そのために、先進国が持つ知恵やノウハウを途上国に伝え、持続可能な方法で食べ物が安定的に収穫できる農業のしくみを、協力してつくりだすことが必要です。
安定的で持続可能な農業が途上国の人々に根付くことは、そこで働く人たちの収入にもつながります。
それは、貧困から抜け出し、子どもの教育や女性の地位向上にもつながっていくなど、飢餓がもたらすSDGsのほかの問題の解決にもつながっていきます。
わたしたちにできることは?
日本は、赤ちゃんの死亡率が低く、栄養状態が良い国の一つです。米を主食として、全国各地の農業生産も盛んです。
しかし、日本の食料自給率(※必要な量の食料を自分の国で生産する割合のこと)は約38%※3。食べ物の半分以上を海外からの輸入に頼っています。
その一方で、本来食べられるのに捨てられてしまう食べ物が年間523万トン。これは毎日、1人茶碗1杯に近い量のごはんを捨ててしまっている計算です。
わたしたちは食べ物を通じて世界とつながっています。そして、それらは、世界中の農家や農園で働く人が思いを込めてつくったものです。つくる苦労や努力を考えてみれば、食べ物をムダにはできません。
では、それらは、どこでどのようにしてつくられているのか考えてみたことはあるでしょうか?
わたしたちの豊かな食生活を保つために、ほかの国の自然環境や健康状態を犠牲にしてしまっていたとしたら、それが持続可能な方法といえるでしょうか。
途上国の飢餓を救うために、わたしたちにはどのようなことができるか、考えてみましょう。
- 世界の飢餓の状況について調べてみましょう。
- 毎日食べているもの。それはどこでだれがつくっているものでしょうか。
- 食べ物をムダにしない。そのために、どのようなことができるでしょうか。
- 環境や人権に配慮された方法でつくられた食べ物や飲み物に与えられる認証マークを調べてみましょう。