目指す子どものすがた
子どもたちにとって身近な平間銀座商店街がこれからも「変わらない街」であるために(目標11)、自分たちにできることとして考えた「商店街を盛り上げる活動」(CMづくりや、清掃活動、横断幕づくり)を通して、商店街の人たちの思いや、商店街の良さに改めて気付いたり、自分たちの思いをどうしたら効果的に伝えられるか考えたりすることで、自分たちが社会や地域の担い手であるという意識を高める。
そして、小学校を卒業してからも地域に対する愛着を忘れずに、地域社会の一員として生活していこうとする姿を目指して、単元を考えた。
実践の概要
子どもたちに、6年間のさまざまな学習活動でお世話になっている「平間銀座商店街」が、実は最盛期の頃に比べて半数の店舗が店を閉め、かつての賑わいも減少傾向にあることを伝えた。それを知り、子どもたちは自分たちの手で商店街を盛り上げるために、「平間銀座商店街盛り上げ隊」を結成した。そして、自分たちの一方的な思いだけではなく、町の人たちの要望を聞き、コロナ禍の現状も考え、「CMづくり・清掃活動・横断幕づくり」の3つの活動を計画した。
商店街を盛り上げる効果的なCMを作るために、映像制作のプロから何度もアドバイスをいただいたり、横断幕作成のために募金を呼び掛け、たくさんの町の人たちに協力・応援してもらったりしながら活動した。
授業内容上の工夫
子どもたちは人との関わりを通して楽しさや、やりがいを感じながら活動することができる。そこで、さまざまな場面で人から学ぶ活動を設定した。また、相手に対する思いが深まることで学習意欲も向上すると捉え、ゲストティーチャーや商店街の人たちと繰り返し関われるように、連絡調整に努めた。
探究活動における整理分析の際に、SDGsの考え方を大切にした。一つの目標の達成だけを目指すのではなく、他の目標との関連を考え、同時に複数の目標の達成を目指したり、一つの目標を達成するために他の目標をないがしろにしたりしないよう、「SDGsの考え方」を意識して整理分析するように、掲示物を工夫したり、声をかけたりするようにした。
実践の流れ
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平間銀座商店街盛り上げ隊 結成
〇担任による故郷の話
〇平間銀座商店街理事長の話
・商店街の現状(最盛期の半分以下)について。
・一緒に盛り上げてほしい。
〇盛り上げる方法を考えよう
・アンケート調査の結果を考察して活動を考える。
〇理事長に提案しよう
・CMづくり・清掃活動・横断幕づくり 決定 -
CMづくり
〇CMの分析
〇映像制作
・映像制作のプロに作り方を教えてもらう。(川崎市シティプロモーション推進室)
〇CM作成
・店舗にアポイントをとり、計画的に取材・撮影を行う。 -
CM完成 放映
〇CMの編集・修正
・映像制作のプロにアドバイスをもらい、編集や修正をする。(川崎市シティプロモーション推進室、「映像のまち・かわさき」推進フォーラム)
〇CM放映
・YouTubeと商店街協力店舗にて放映。 -
清掃活動
・理事長に相談しながら、クラスごとに担当の曜日と時間を決めて取り組んだ 。
・小グループを作り、安全衛生に気を付けながら取り組んだ。 -
横断幕づくり
・横断幕作成のために、募金を呼び掛けるCMを追加し、協力店舗に募金箱を設置させてもらう。
・学校行事の際に、保護者の方々に募金を呼び掛ける。
・商店街に対する自分たちの思いを込めて、横断幕の言葉を考える。
・横断幕の設置をみんなで祝う。
SDGsの視点を取り入れた授業実践の効果
先述の通り、SDGsの考え方で思考させることで、日常における子どもたちの視野が広がったように感じる。初めは教員に促されてからSDGsに目を向けていたが、次第にSDGsの視点で主体的に物事を考えようとする子どもたちの姿が見られるようになってきた。
また、商店街の人たちや保護者の方々との関わりの中で、子どもたちから自分たちの活動が目標11と目標17の達成につながるということを伝えられたこと、広められたことも大きな成果と言える。
SDGsを取り入れた授業実践にあたっての課題・乗り越え方
子どもたちの活動に対する町の人たちの反応を、直接子どもたちに伝える機会を設けてあげる必要があると感じた。達成感のある活動にはなったが、自分たちが努力したことの成果や、自分たちが成し遂げたことの意味を実感することでより達成感のある活動になり、次の活動につなげることができたと思う。
SDGsの達成は、現実に実感するのは難しい。それでも達成に向かって取り組むためには、小さな成果の積み重ねと、やりがいによる意欲の持続が必要になる。そのために、子どもたちに活動の成果を実感させることを意識したい。